健康診断には、聴覚検査という項目がある。ヘッドフォンのような器具を両耳につけ、ピー、という音が鳴っている間だけボタンを押し続ける、あれだ。
私はこの検査に毎回引っかかる。高い方の音が聞こえないのである。
高音が聞こえないと言われると、加齢による聴力低下を疑われそうだが、そういう話ではない。以前、耳鼻科でもっと細かく調べてもらったことがある。結果、聞こえないのは4000Hzのみだった。それより高い音域も低い音域も、まったく問題がない。
つまり私の耳は、4000Hzという一点にだけ、ピンポイントで穴が空いている。
健康診断の聴覚検査は、低い方が1000Hz、高い方が4000Hzで測定する。ドンピシャである。だから毎回、私は必ずNGの判定を受ける。
ところで健康診断という名称について、ここで一度考えてみたい。あれは「健康であること」を見つける検査というより、「いかに自分が不健康であるか」を証明する場だ。血液検査の数値然り、聴力検査然り、突きつけられるのは不健全さの証拠ばかりである。であれば「不健康診断」と呼ぶ方が、よほど実態に即している。
さて、話を戻す。
4000Hzが聞こえないという状態は、日常生活にほぼ支障がない。「ほぼ」と書いたのは、先日、支障をきたしたからである。
体調がいまひとつでクリニックに行った。受付で体温計を渡され、脇に挟んで測る。測り終わるとピピピとアラームが鳴る仕組みらしいのだが、待てど暮らせど鳴らない。
しばらくして恐る恐る表示を見ると、とっくに計測は終わっていた。アラームなど、いつ鳴ったのかも分からない。スマホをいじっていて聞き逃したのかと最初は思ったが、そうではなかった。あとで調べたところ、電子体温計のアラーム音はおおむね4000Hz前後らしい。
またしても、ピンポイントで穴に落ちた。
これ以降、体温を測る際は、受付のお姉さんに「音が聞こえないので、終わったら教えてください」と毎回頼むことにしている。