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龍神様

2026

蛙鳴町(あめいちょう)奇譚:影の告白

 五月の四日、空の様子がおかしかった。 朝から霧が降りてきた。降りてくる、という表現は正確ではないかもしれない——池から立ち昇るのでなく、頭上より湿った影が、まるでデータパケットの洪水がネットワークを静かに溢れさせるように、音も予兆もなく滑り落ちてきた。逆さ霧だ、と大人たちは言った。

地球のてのひら

春霞の溶けきった昼下がり、龍神様の池が青空を丸ごと映していた。 「見ろ——今日のコポーは、大地と対話する男になる」 コポーは腕まくりをして池のほとりにしゃがみ込み、スパイスから「研究目的で」借りてきた細い針の温度計を黒土に差し込んだ。小さな画面が37.2と点滅する。

四月の底力

南の空気が、朝から少しだけ違う匂いをしていた。 池の水面がざわめいている。風はないのに、龍神様の祠のしめ縄が揺れていた。コポーは縁石に腰かけて、その揺れを眺めながら腕を組んだ。カッコいいポーズをとるつもりだったが、なんとなくそういう気分になれなかった。