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逆さ霧

2026

蛙鳴町(あめいちょう)奇譚:影の告白

 五月の四日、空の様子がおかしかった。 朝から霧が降りてきた。降りてくる、という表現は正確ではないかもしれない——池から立ち昇るのでなく、頭上より湿った影が、まるでデータパケットの洪水がネットワークを静かに溢れさせるように、音も予兆もなく滑り落ちてきた。逆さ霧だ、と大人たちは言った。