若葉の風が踏切の向こうから人波を連れてくる朝、スパイスは布に包まれた古い計測器を抱えて工房から出てきました。
広場の石畳に腰を下ろし、布をそっと開くと、金属の縁が傷み文字盤がすっかり黄ばんだ器具が現れました。でも針だけは今日も迷わず、まっすぐを指しています。スパイスは手帳を開き、日付と数値を書き込み、顔を上げもせずに言いました。
工房の灯は、夜明けより先に消えていた。
スパイスが外へ出てきたのは、龍神様の湖から朝霞が立ち上り始めた頃のことだった。両腕に抱えていたのは、引き出しの奥で長年眠っていた計測器——外装には錆が浮き、目盛りの読み方を記したラベルは黄ばんでいる。それを町はずれの石垣の前にそっと置くと、スパイスは一度だけ深く息を吸い、電源を入れた。
蛙鳴町の駅前広場には、今夜、不思議な「境界線」が引かれていました。 3月31日。年度の終わりを告げる風が吹く中、エンジニアのスパイスは、古びた蔵の入り口に、特製のホログラム・プロジェクターを設置していました。