梅雨の合間、橋の欄干に腰を落ち着けたハッシーが、くちばしで器用に都会の新聞をめくっていた。
「なあ、ケロミ」
しだれ桜の根元に座って野イチゴをつまんでいたケロミが顔を上げた。
龍神様の池が、六月の空を映して鈍く光っていた。梅雨の晴れ間に夕凪が来て、ハッシーが翼の骨をそっと確かめるように羽根を広げた。
「骨が痛む。でも、雨の予感じゃない」
スパイスの工房には、春の夕光が傾いて差し込んでいた。
作業台の上には錆びた螺旋と古いコンデンサが山のように積まれ、その中央に鈍い銀色のアンテナが一本、斜めに刺さっていた。スパイスは半田ごてをそっと置き、ヘッドフォンを耳にあてた。