六月の雨上がり。スパイスの工房からは、はんだの焦げ臭さと機械油の匂いが漏れていた。
コポーが扉を押し開けると、スパイスは緑の基盤に、細い彫刻針で数列を刻んでいるところだった。
春雨の上がった払暁、龍神様の祠の前に広がる石畳は、霧の奥でその目地を白く滲ませていた。
スパイスが機材を持ち出したのは、まだ夜の明けぬ前のことであった。工房から運び込んだレーザーキャリパーと自作のデータロガーを祠前の石畳に据え付け、彼は細い針を繰り返し落とし続けた。針の長さは一。目地の間隔は二。
蛙鳴町に七つの橋がある。
誰もそれを疑わない。数えても六つしか見つからなくとも、七つある、と古老たちは言い、住人たちはそれを信じ、そして数えることをやめる。数えることをやめた者だけが、この町の時間に馴染むことができる——それが蛙鳴町の流儀というものである。