朝露が石畳を湿らせる時間帯、コポーの部屋の窓枠だけが夜明け前の橙色ではなく、モニターの青白い光で染まっていた。
「……よし。北区の制圧、完了。次は港エリアだ!」
五月の光が龍神様の湖を白く塗り替えるころ、スパイスの工房の前には小さな騒ぎが起きていた。
「なんだこれ、また誤作動か」
スパイスは舌打ちしながら、工房の壁に取り付けた黒い箱を見上げた。センサーが朝から断続的に揺れ続けている。数値は異常ではない。ただ、規則正しすぎる。
五月の朝が池の面を金色に染め始めた頃、コポーは広場の隅で一人、古いけん玉を握っていた。
記録の蔵の棚の奥で見つけたそれは、塗装の剥げた赤い球に、磨り減った黒い剣先。木の柄には長年の手油が染み込んで、つるりとした重みがある。道具が古くなるのは、誰かに大切に使われてきた証拠だと、ソンチョーがよく言っていた。
五月の朝、スパイスの工房から甘い匂いが漏れてきた。
「これで十四種類目だ」
作業台の上に並んだ小瓶は、コポーの目には怪しい実験薬にしか見えなかったが、一本ずつ丁寧なラベルが貼られている。龍神様の湧き水、ケロミが去年の夏に摘んで干したミントの葉、モッチーの畑から分けてもらったはちみつ。