五月の午後、ケロミの歌がもう一曲分だけ長くなりすぎた。
最初の綿毛が、スパイスの工房の換気窓から音もなく滑り込んできた。ふわ、と橙色の灯の中を漂う白い粒を見て、スパイスは静かに「ああ」と言い、それから計測器の液晶が消えていく順番を眺めた——端の小さなメーターから順に、夢の中へ落ちていくように。棚の奥の古い受信機だけが最後まで残り、ドク、ドク、と脈打ちながら体温を保ち、それからゆっくりと静かになった。
五月の午後、しだれ桜の川沿いに白いものが舞い始めた時、スパイスはちょうど新しい受信機の配線を繋ぎ終えたところだった。
工房の作業台に並んだ機械たちが、薄い蜃気楼のような熱を帯びて稼働している。スパイスは汗を拭い、開け放った窓から流れ込む五月の風を吸い込んだ。いつもとは違う、少し甘い風だった。