カエル山の中腹から眺めると、蛙鳴町の屋根がちょうど掌に収まる高さになる。
コポーは三度目の踏み出しで、また足が止まった。
頂上の尖り石まであと三十歩。石は雨に磨かれて丸く、蛙鳴町で一番空に近い場所だとコポーが一人で決めていた。何か大事なことを決める前に必ずここに来るのだが、急な斜面に足がすくんで、今日は朝からもう三度引き返していた。
蛙鳴町の駅前広場。コポーは、エンジニアのスパイスが都会から取り寄せたという、最新の「感情翻訳バッジ」を胸につけて震えていました。
「スパイス、これをつければ……僕が女の子の前でモジモジしていても、僕の『真のカッコよさ』が自動的に翻訳されて伝わるんだな?」 「……理論上はな。対象の脳波と心拍数を解析し、最も適切な言語に変換してスピーカーから出力する。君の空回りするフラストレーションも、これで解消されるはずだ」