踏切の警報機が、のどかな空気に規則正しいリズムを刻んでいる。 線路脇の土手では、菜の花が競うように黄色い火を灯し、風が吹くたびに甘い香りが鼻腔をくすぐった。
蛙鳴町の空は、春の霞がかかったような柔らかな白に包まれていました。
4月9日。今日は「大仏の日」であり、また「左官の日」でもあります。
町の広場では、モッチーが目を細め、蓮の花のような形に組んだ石の上にどっしりと座り込んでいました。その姿は、まるで町を守る本物の大仏のようです。
蛙鳴町を流れる小さな川には、古びた石造りの橋がかかっています。 4月3日。今日は「日本橋開通記念日」にちなみ、町では橋の汚れを落とす「橋洗い」が恒例行事となっていました。
スパイスが聴診器型のガジェットを持って、広場を歩いていた。
「何してるの?」モッチーが声をかけた。
「町の『見えない小さな声』を聴いている」
モッチーが首をかしげた。
三月十六日の朝、モッチーは夜明けから台所で団子をこねていた。
ひとつ、ふたつ……十六個。数えながら、丁寧に、均等な大きさに丸めた。
「龍神様への春の供え物だ」
都会では朝から数字が騒がしかった。
「日経平均がまた下がったって……ミニコー、何円下がったか知ってる?」
「六千円以上だって」
モッチーが黙って大根を抱え直した。今日は龍神様の池への供え物の野菜を届ける日だった。重い。でも重さは、慣れている。