スパイスが難しい顔で端末を見ていた。
「世界のどこかで、情報の扉が閉められようとしている。見えない壁が増えている」
ミニコーがシュークリームをほおばりながら「どんな壁?」と聞いた。
三月の早い朝、コポーが裁縫道具を広げて眉間に皺を寄せていた。
「スパイスー、なんで針って二本あるんだ?」
「糸を通す穴と刺す先が別々だから。基礎知識だ」
三月の朝霧がまだ龍神様の湖を覆っていた頃、スパイスは湖面を覗き込んで眉をひそめた。
「……揺れている」
彼の水波センサーの針が、かすかに、しかし規則正しく振れていた。遠い海の底から伝わってくる微振動——まるで誰かが巨大な太鼓を打ち続けているような波紋が、霧の奥から静かに広がっていた。