七月の強い陽射しが、駅の線路をゆらゆらと陽炎のように揺らしている。
うだるような熱気がホームを包む中、改札口に近い木製のベンチの周りだけは、不思議と澄んだ冷気に守られていた。ベンチの端で、白くまのキリガミネンが静かに立ち尽くしている。彼が白い息をすっと吐き出すたび、風鈴の音のように涼やかな風がホームを吹き抜けた。
駅前広場に立て架けられた青竹が、さらさらと乾いた音を立てて揺れている。
昼下がりの熱気がアスファルトから立ち上る中、改札口の周りだけは、切り取られたようにひんやりとした空気が満ちていた。ベンチの端で、白くまのキリガミネンが静かに佇んでいる。彼がそっと息を吐き出すたび、駅舎の軒下を涼しい風が通り抜けていく。
梅雨が明けきらぬ朝、蛙鳴町の古い踏切には、どこか薄荷めいた冷気が漂っていた。
ミニコーが都会から運ばれた新聞を膝の上でひらき、兄のいない縁側でひとり呟く。「……都の物理学者が言うには、この世は本当は九つの次元でできていて、僕らはそのうち三つしか畳めずにいるらしい」。折り畳まれて見えなくなった残り六つは、指の先ほどの隙間に潜んでいるのだという。
ひえびとした青い七月の、しめり気ある銀河の底の夜でした。蛙鳴町の古い踏切のそばには、背の高いシラカンバの木々が立ち並び、その葉は真空からこぼれた青い燐光をあびて、サラサラと冷たい金属のように擦れ合っていました。遠くの龍神様の湖から吹いてくる風には、かすかな薄荷の匂いと、大気電気の放電によるオゾンの香りが混ざり合っています。
七月の午後、駅前広場の石畳はじりじりと焼けていた。
踏切の向こうから定刻通りに現れた白い影が、ホームの端の定位置にゆっくりと身を収める。キリガミネンが静かに佇むと、周囲の空気がほんの少し——ほんの少しだけひんやりと変わった。誰も気づかない程度の変化だったが、電車を待つ人々は、気づかぬままにその方向へ少しずつにじり寄っていた。
梅雨の最後の雫がまだ草の先に残る夕暮れだった。
龍神様の祠の石段の下に、茅の輪が立っていた。青草を編んだ輪はビピクの肩幅の三倍ほどもあり、夕霧の中にぼんやりと浮かんでいる。傍らの竹籠には白い紙の人形が几帳面に折り重なっていた——形代だ。半年に一度、この日の夕暮れに、祠へ向かう道を住人たちが歩いていく。
広場の石畳に、午後の光がひどく白っぽく映えていた。
「第七号と、第八号」
マスクメンは「正義のヒーロー心得十箇条」の第四条——守るべき相手を一人残さず把握せよ——を脳内で繰り返しながら、商店街の入口を行ったり来たりしていた。マスクの内側が汗ばんでいる。ハッシーが翼の付け根を押さえながら飛んできたのは今朝のことで、「鈍く重い疼き、それも二重だ」と短く告げて去っていった。
梅雨の湿気の奥に、台風の気配が忍び込んでいた。
蛙鳴町の駅のホームでは、キリガミネンが白い体を柱に預けて、じっと南の空を見上げていた。いつもならば往来する人々の間にひんやりとした空気の島を作るだけで十分な彼が、今日は珍しく、誰かに話しかけたそうにしている。雲の淵がほんのり橙を帯び、風は湿っているのにどこか低く、重い。
薄暮の記録の蔵に、タッチーは忍び込んだ。
正確には「忍び込んだ」というより、脚のあまりの長さゆえに鴨居をまたぐ動作が、傍目にはどうにも怪しく映るのである。
梅雨の晴れ間の午後、踏切の警報機だけが静かな蛙鳴町を区切っていた。
「キリガミネン、また今日もここにいるんだね」
コポーが声をかけたのは、駅ホームの端に立つ白い大きな体へだった。キリガミネンは返事をしない。それがいつものことだと、コポーは知っている。
六月の雨は、石の匂いを連れてくる。
広場の端、古い石畳が川に向かってゆるやかに傾いている場所に、ペーシャンは朝からじっと座っていた。モチモチとした巨体を折りたたみ、濡れた石のうえにそっと置いた。まるで土の一部のように、ただ、そこにある。
梅雨の合間を縫う薄陽が、ホームの石畳を白くまだらに焼いていた。蒸した空気の中に、どこかの軒先から練りきりの甘い匂いが漂ってくる——甘さの中に、豆の渋みが混じった、この季節だけの匂い。
六月の白昼、蛙鳴町の石畳が金色の薄膜に覆われた。
広場の中央から渦を巻くように浮かび上がった文様は、踏みならされた石の継ぎ目を縫って外周へと広がり、まるで巻き貝の断面図を地面に刻み込んだかのようであった。誰かが気づいて声を上げる前に、その輝きは消えた。しかし広場の石畳の配置が微妙に変わったことに、スパイスだけは気づいた。
蛙鳴町奇譚:待合室のフレーム # 駅のホームに、六月の湿った風が滑り込んでいた。
五月の正午を少し過ぎた頃、コポーは都会から届いたばかりの号外をポケットに押し込んだまま、町外れの踏切の前に立ち止まった。
警報機が、鳴っていた。
いつも開いているはずの遮断機が、白黒の棒を水平に差したまま微動だにしない。列車の来る気配もなく、線路の向こうに停まった車もなかった。コポーは鉄の棒を指の背で叩いてみた。乾いた音がして、消えた。