広場の隅、石を組んだかまどから立ちのぼる煙が、藍色に暮れかけた空へ細く溶けていく。網の上で弾ける油の音に混じって、炭のはぜる匂いが鼻先をくすぐった。
「見ててよソンチョー、僕の"完璧な焼き加減"ってやつをさ!」
コポーは菜箸を指揮棒のように振り回し、モッチーが運んできたばかりの茄子とトウモロコシを次々と網に並べていく。しかし勢い任せに炎を煽ったせいで、こんがりどころか端から真っ黒に焦げていく野菜たち。
「あーもう、なんで思い通りにいかないんだ……」
肩を落とすコポーの隣で、モッチーがどっしりと腰を下ろした。土のついた手で、ゆっくりと炭の位置を整えていく。
「急いた火は、表だけ焦がして中まで届かん。……こういうのは、じっくり待つのが一番美味い」
モッチーが差し出したのは、隅でとろ火にかけていた分厚い椎茸だった。齧りつくと、じゅわりと染み出す甘い水気に、コポーは思わず目を丸くした。
「フェっフェっ。焦った火はコポーそのものじゃのう」
ベンチから見ていたソンチョーが、桜餅片手に笑う。「一人で全部を焼こうとするから焦げる。……網を囲む誰かがおれば、火加減も自然と定まるものよ」
言われてコポーは、焦げた野菜の皿をそっとモッチーの方へ押しやった。
「……半分こしよう。焦げてるとこは僕が食べるから」
炭の爆ぜる音が、いつもより優しく夜に響いた気がした。
余白: 翌朝、かまどの灰の中からコポーが見つけたのは、焦げ跡ひとつない、綺麗な焼き色の椎茸がひとつだけ残されていた。
【本日の雫】
- 焼肉の日(8月29日):「8(や)・2(に)・9(く)」の語呂合わせから、8月29日は「焼肉の日」とされている。