夕暮れ時、石橋の欄干に西日が滲むように差し込んでいた。蛙鳴町を流れる川面は橙色に染まり、しだれ桜の葉が微かな水音に合わせて揺れている。
「見てくれよ、これ!」
ハッシーが翼を大きく広げ、都会から運んできた新聞の切り抜きをコポーの前にひらりと落とした。写真には、無数の光を纏った巨大な吊り橋が夜空に浮かんでいる。
「都会にはこんな橋があるんだってさ。渡るだけで、まるでお祭りみたいに七色に光るらしい」
コポーの目が輝いた。「うちの橋も、こうすればもっと目立つんじゃないか? スパイスに頼んで、電球をびっしり巻きつけてもらおう!」
早速、苔むした石橋の欄干をよじ登り、想像の光を思い描きながら鼻息を荒くするコポー。だが調子に乗って飛び跳ねた拍子に足を滑らせ、川面すれすれのところで欄干にしがみつく羽目になった。
「フェっフェっ」
しだれ桜の下から、ソンチョーの笑い声が聞こえた。木の枝を杖代わりに突きながら、ゆっくりと橋のたもとへ歩み寄る。
「コポーよ、この橋が七色に光らんのには理由がある。渡るときは振り返るな、それが龍神様との古い約束じゃ。眩しい光で飾ってしまえば、後ろを見とうなるじゃろう?」
コポーは欄干にしがみついたまま、川の流れをじっと見つめた。夕日を映した水面は、七色の光よりも静かで、深い色をしていた。
「振り返らない橋、か……」
コポーはそっと欄干から手を離し、橋の真ん中に立った。西日を背に、前だけを見て一歩を踏み出す。派手さはないけれど、渡り切った先で、ハッシーとソンチョーが小さく拍手をしてくれた。
余白: 翌朝、ハッシーの持ってきた新聞の切り抜きは、コポーの部屋の壁に貼られていた——ただし、誰にも見えない棚の裏側に。
【本日の雫】
- レインボーブリッジ開通記念日:1993年8月26日、東京港に架かる「レインボーブリッジ」が開通したことにちなむ記念日。
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