送り火の煙がまだ空にうっすら残る中、広場には見慣れない光の柱が三本、ぐらぐらと組み上がっていた。
「よし、点いた……! これで夜でも、僕の勇姿が皆に届く!」
コポーは即席の「球場」のホームベース代わりの石の上で、自作のバットを構えて胸を張る。傍らでは、スパイスが古びた自転車の発電機と裸電球の束を繋ぎ合わせていた。
「フィラメントの寿命なんて知ったことじゃない。今夜さえ持てばいいのさ」
つぶやいた途端、電球がジジ、と震えて橙色の光を落とす。誘われた羽虫が輪の中を舞い、涼しい夜風にその羽音が混じった。
「さあ投げてくれ、ミニコー! この一球で僕は伝説になる!」
弟のミニコーが軽く放った球は、しかし光の輪の外へふらりと逃げていく。バットは空を切り、コポーは尻もちをついた。
「ぐえっ……」
橋のたもとで釣り糸を垂れていたソンチョーが、フェっフェっと笑った。
「灯りというのはのう、遠くを照らすためではなく、そばにいる者の顔を見るためにあるんじゃ。お前さんの間抜け面も、今夜はよう見える」
コポーは尻についた砂を払いながら、それでも笑った。橙色の輪の中に、確かに仲間たちの顔があったからだ。
闇の向こうから、また一球、白い球が放たれる。
余白: 翌朝、電球の周りに落ちているはずの羽虫の死骸が、なぜか一匹も見当たらなかった。
【本日の雫】
- プロ野球ナイター記念日: 1948年8月17日、横浜ゲーリック球場(現在の横浜スタジアム)で日本初のプロ野球ナイター公式戦(東京巨人軍対中部日本、3対2で中部が勝利)が行われたことにちなむ記念日。