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  1. 蛙鳴町(あめいちょう)奇譚/

地球のてのひら

春霞の溶けきった昼下がり、龍神様の池が青空を丸ごと映していた。

「見ろ——今日のコポーは、大地と対話する男になる」

コポーは腕まくりをして池のほとりにしゃがみ込み、スパイスから「研究目的で」借りてきた細い針の温度計を黒土に差し込んだ。小さな画面が37.2と点滅する。

「……体温と同じだ」

呟きが水面に落ちる前に、しだれ桜の幹に背中を預けたソンチョーが目を細めた。

「地球は今日も熱を持っておるのう。龍神様がこの地に初めて根を張った時から、ずっとそうじゃ」

膝に載せた古い石の欠片を、乾いた指先でゆっくり撫でながら続ける。

「人がどんな力を手に入れようと、この星がとうに持っておった力じゃ。怒らず、自慢もせず、ただ黙って全部を受け止めてきた。それがこの地の、本当の力というものじゃ」

コポーは数字を読むのを諦め、黙って針を引き抜いた。黒土がほろりと崩れ、春の湿った匂いが鼻先まで上がってくる。手のひらに乗った一粒の土は、思っていたより温かかった。

「……なんか、今日は静かにしてたい気分だ」

「フェっフェっ。たまにはよかろう」

夜が来た。こと座の流星が一筋、龍神様の池の真上を引いて消えた。黒い水面が一瞬だけ光を映し、また静かに戻った。

余白: コポーはその夜、誰にも言わず池の周りをゆっくり一周した。足裏に伝わる土の温もりを確かめるように。


【本日の雫】
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  • アースデイ(地球の日): 毎年4月22日。2026年のテーマは「Our Power, Our Planet(私たちの力、私たちの星)」。国連が定める「国際母なる地球の日」でもある。
  • こと座流星群: 4月22日夜から23日未明にかけて見頃を迎える、春の流星群。