スパイスの工房に、手作りの電球が一個下がっていた。
「今日、点けてみる」
コポーとミニコーが見守る中、スパイスがスイッチを入れた。
フィラメントがゆっくり赤くなって、橙色の光が工房を満たした。
「……わあ」
ミニコーが息をのんだ。
コポーがしばらくその光を見ていた。
「最初に電気を点けた人って……怖くなかったのかな」
スパイスが答えた。
「怖かったから、点けたんじゃないか」
「え?」
「暗さを知っているから、光を作ろうとする。怖くない人間は、わざわざ灯りを作らない」
コポーが光を見た。橙色の揺らぎが、三匹の影を壁に大きく映した。
「……俺も、怖いから頑張ってるのかな」
「そうじゃないか」
工房の外で、夜の蛙鳴町が静かに呼吸していた。
余白: スパイスはその電球を、工房の一番見える場所に飾った。消していない。
【本日の雫】
- 電気記念日(3月25日): 1878年3月25日、東京・銀座木挽町で日本初のアーク灯が点灯されたことを記念する日。