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  1. 蛙鳴町(あめいちょう)奇譚/

帰り道の団子

春彼岸のお墓参りの帰り道、コポーとミニコーが団子を食べながら歩いていた。

「先祖ってさ、カッコよかったのかな」

「どうだろ」ミニコーが串を回しながら言った。「兄ちゃんみたいに、不器用だったんじゃないかな」

「……俺不器用じゃない」

「お花、供えるとき倒したじゃん」

「風のせい」

「三回」

コポーが団子を一口で食べた。甘かった。桜のつぼみがまだ固い枝の間から、春の匂いがした。

「でも不器用でも、ちゃんとここまで来てくれたんだよね」

ミニコーが静かに言った。

コポーが足元を見た。踏切の向こうから、しだれ桜の川沿いの道が見えた。

「……そうかもな」

二匹の影が、夕暮れの石畳に長く伸びていた。

余白: コポーはその夜、お墓に倒してしまった花を、頭の中でもう一度丁寧に供え直した。


【本日の雫】

  • 春彼岸(春分を中日とした7日間): 先祖のお墓参りをする日本の風習。2026年は3月17日〜23日。