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  1. 蛙鳴町(あめいちょう)奇譚/

円周率のお返し

三月十四日。コポーは朝から計算していた。

「バレンタインにもらった分の、ちょうどいいお返しって何だ……」

スパイスが「3.14……円周率だ。割り切れない数字だ」と無表情に言った。

「え?」

「今日はπの日でもある。始まりはあるが終わりのない数字。ちょうどいいお返しなど、存在しないかもしれない」

コポーはしばらく考えて、ホワイトチョコレートを一枚だけ持ってオヒサマのいる場所へ向かった。

渡そうとしたら、上手く言葉が出なかった。3.14159265……と続くように、言いかけて止まり、また言いかけて止まった。

オヒサマが先に手を伸ばしてチョコレートを受け取った。

「受け取ったよ。それでいい」

コポーはまだ何か言いかけていたが、それ以上は続かなかった。

余白: コポーのポケットには、「お返しの言葉リスト(未完成)」が折りたたまれて残っていた。


【本日の雫】

  • ホワイトデー(3月14日): バレンタインデーのお返しをする日。日本発祥の文化。
  • πの日(3月14日): 円周率π≒3.14にちなむ記念日。πは無限に続く割り切れない数。