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  1. 蛙鳴町(あめいちょう)奇譚/

十五回目の春

午後二時四十六分、町が静かになった。

広場の住人も、池のほとりで立ったままでいるコポーも、橋の欄干にもたれたタッチーも、それぞれの場所でしばらく動かなかった。

ハッシーが空高く輪を描いた。一度、もう一度、さらにもう一度。

低い場所に降りてきたとき、ケロミが静かに歌った。歌詞はない。音だけ。でも、その音は池の水面に広がって、遠い空まで届くような気がした。

ソンチョーが目を閉じた。シルクハットの鍔を少しだけ下げて、長い時間そうしていた。

十五年という時間がどれだけの重さを持つか、コポーにはまだ分からない。ただ、大人たちの背中が今日だけ少し丸くなっていることには気づいていた。

夕暮れになって、池の水が橙色に染まった。

余白: その夜、龍神様の湖に灯籠が一つ浮かんでいた。誰が流したか、誰も言わなかった。


【本日の雫】

  • 東日本大震災から15年(3月11日): 2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震とそれに伴う津波が発生。犠牲者・行方不明者は2万人以上。2026年、震災から15年の節目を迎えた。