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  1. 蛙鳴町(あめいちょう)奇譚/

ありがとうの重さ

都会では朝から数字が騒がしかった。

「日経平均がまた下がったって……ミニコー、何円下がったか知ってる?」

「六千円以上だって」

モッチーが黙って大根を抱え直した。今日は龍神様の池への供え物の野菜を届ける日だった。重い。でも重さは、慣れている。

「数字って怖いね」とミニコーが言った。「ゼロが増えたり消えたりするだけで、みんな顔色変わって」

「……そうだな」

モッチーが歩きながら、ぼそっと言った。「今日は『サンキューの日』らしいぞ」

「三月九日だから?」

「ああ」

ミニコーが少し考えた。「じゃあ、六千円より『ありがとう』の方が値打ちがある日だね」

モッチーが目を細めた。重い大根を担いだまま、少しだけ歩みが軽くなった気がした。

余白: 供え物を置いた池の前で、モッチーはしばらく手を合わせていた。


【本日の雫】

  • サンキューの日(3月9日): 3(サン)9(キュー)の語呂合わせ。感謝を伝える記念日。
  • 日経平均株価急落: 中東情勢の悪化を受け、2026年3月9日に日経平均株価が6000円以上の値下がりを記録した。