三月の風が広場を横切るたびに、ケロミはくしゃみをした。
「……っくし! っく……」
「大丈夫か?」
コポーが恐る恐る近づくと、ケロミが涙目で首を振った。声が出ないわけではないが、いつもの透き通った音とは違う。かすれた空気が、言葉の端にまとわりついていた。
「今日、広場で歌おうと思ってたのに」
「じゃあ俺が歌う」
「え?」
コポーが胸を張り、ケロミの十八番を一小節歌った。音程は三か所外れ、リズムは四か所ずれた。
ケロミが思わず吹き出した。笑ったら、かすれた声の奥から少しだけ本来の声が顔を出した。
「……あ、出た」
「俺の歌のおかげだろ」
「違う」とケロミは言ったが、もう一度笑っていた。
余白: コポーはその日の夕方、「歌の才能ゼロ認定証」をスパイスに発行してもらった。
【本日の雫】
- 花粉症記念日(3月7日): 花粉症に悩む人を明るくしようと制定された記念日。3(は)7(な)の語呂合わせから。
- 消防記念日(3月7日): 1948年3月7日に「消防組織法」が施行されたことを記念する日。