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踏切

2026

蛙鳴町奇譚:九次元の折り目

梅雨が明けきらぬ朝、蛙鳴町の古い踏切には、どこか薄荷めいた冷気が漂っていた。 ミニコーが都会から運ばれた新聞を膝の上でひらき、兄のいない縁側でひとり呟く。「……都の物理学者が言うには、この世は本当は九つの次元でできていて、僕らはそのうち三つしか畳めずにいるらしい」。折り畳まれて見えなくなった残り六つは、指の先ほどの隙間に潜んでいるのだという。

安全な場所の匂い

梅雨の晴れ間の午後、踏切の警報機だけが静かな蛙鳴町を区切っていた。 「キリガミネン、また今日もここにいるんだね」 コポーが声をかけたのは、駅ホームの端に立つ白い大きな体へだった。キリガミネンは返事をしない。それがいつものことだと、コポーは知っている。