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スパイス

2026

赤金色の八ビット

夕暮れの生暖かい風が、スパイスの工房の開け放たれた窓から流れ込み、はんだ付けの煙を緩やかに揺らしている。 作業台の上には、都会の廃材置き場から拾ってきたという、くすんだ赤と金のプラスチックで作られた手のひら大の小箱が置かれていた。細いケーブルで繋がれた二つの平たいコントローラーが、まるで小動物の耳のように左右に伸びている。

蛙鳴町奇譚:龍灯虫

梅雨明けの蒸し暑い宵、龍神様の湖畔に、蛍とも違う淡い青緑の光が無数に瞬いていた。羽音はなく、風に流されることもない。住人たちはそれを「龍灯虫(りゅうとうむし)」と呼び、夏の初めにだけ現れる不思議な光として、特に驚きもせず眺めていた。

蛙鳴町奇譚:無限の喇叭

梅雨明けの朝、龍神様の湖の浅瀬に、一本の喇叭(らっぱ)が逆さに突き立っていた。朝顔のように大きく口を開き、細くなる胴は水底のさらに奥へと、目で追えぬほど遠くまで伸び細っている。誰が置いたわけでもないのに、住人たちはそれを、昔からそこに在ったものとして受け入れていた。