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  1. 蛙鳴町(あめいちょう)奇譚/

ほろ苦い贈りもの

夏の陽ざしが本格的な白さを帯びはじめた朝、ソンチョーの縁側では、緑のカーテンが心地よく揺れていました。這わせた蔓には、いぼだらけの実がいくつも重たげにぶら下がっています。

「……フェっフェっ、今年もよう実ったのう」

ソンチョーが縁側に腰を下ろし、蔓の隙間から差し込む木漏れ日に目を細めていました。蝉の声が遠くで途切れがちに鳴いています。

そこへ、モッチーがのっそりと姿を現しました。抱えていた籠いっぱいのゴーヤーを、縁側にそっと置きます。土の匂いと青臭い実の香りが、朝の風にふわりと混じりました。

「ソンチョー、今年は苦味が強いよ。土がよく育った証だと思う」

「苦いのはええことじゃ。歳を取ると、甘いものより苦いものの方が、じわりと沁みる」

ソンチョーはいぼだらけの実をひとつ手に取り、日にかざして眺めました。若い頃には見向きもしなかった苦味が、今では何よりのご馳走に思えるのだと言います。

少し離れた木陰から、コポーがその様子をうかがっていました。手には昨夜こっそり仕込んだ包み――正直に言えば、ただの塩もみと胡麻和えです。渡すには地味すぎると何度も迷い、朝まで縁側に近づけずにいました。

「……あの、ソンチョー」

意を決して差し出した包みに、ソンチョーは目を丸くします。中を覗き、ふっと相好を崩しました。

「ほう。モッチーのゴーヤーを、お主が仕込んだか」

「昨日ミニコーが、『こういう日は何か返した方がいいらしいよ』って言ってて……でも、こんな地味なものしか思いつかなくて」

コポーは俯きながら、耳の後ろを掻きました。ソンチョーは一口食べると、わざと顔をしかめてみせます。

「苦いのう。……じゃが、悪くない」

その言葉に、コポーの喉袋がぷくりと膨らみました。木漏れ日が縁側に落ち、籠に残ったゴーヤーの緑が、いっそう濃く輝いて見えました。

余白: その日の夕方、コポーの手のひらには、モッチーからこっそり分けてもらったゴーヤーの種がひとつ握られていた。

【本日の雫】

  • みんなの親孝行の日: 8月5日は「おや(8)こ(5)」の語呂合わせにちなむ記念日。
  • ゴーヤーの日: 8月5日は「ゴー(8)ヤー(5)」の語呂合わせにちなむ記念日。