梅雨が本気を出していた。
昨夜から降り続ける雨は朝になっても勢いを増すばかりで、石畳は薄い川のようになり、しだれ桜の枝先は重さに負けて地面を叩き続けていた。そんな中で、コポーは傘もなくオヒサマの家の前に立っていた。
手には、泥でこねて作った小さなカエルの像が一つ。昨夜ノートを開いたが言葉が出てこなくて、夜明け前に代わりに手を動かして仕上げたものだった。しかし大雨に打たれて、耳の部分がもうほとんど溶けている。
「……こんにちは」
声に出したら、雨の音にほとんど飲まれた。
窓が開いた。オヒサマが顔を出し、ずぶ濡れのコポーを見た。泥像を見た。また彼を見た。
「……何してるの」
「届けに来た」
「何を」
「これを」
どれほどの間があったのか、コポーには分からなかった。雨は変わらず降り続けた。オヒサマは一言も言わず、窓枠から腕を伸ばして一本の傘を差し出した。
「濡れすぎ。帰りに使いなさい」
窓が閉まった。
コポーは傘を受け取った。泥像はもうカエルの形をほとんどとどめていなかったが、渡せなかったことは不思議と悔しくなかった。受け取った傘の柄が、まだ少し温かかったから。
しだれ桜の下で、ソンチョーがシルクハットを濡らしながら「フェっフェっ」と笑っていた。
「雨というものは、言えない言葉の代わりをしてくれることがある。濡れることを恐れなかった者だけが、それを知るのじゃ」
コポーは傘を開き、溶けた泥像を胸ポケットにそっとしまった。
余白: その夜、オヒサマは窓辺に何も置かなかった——ただ、カーテンを少しだけ開けたまま眠った。
【本日の雫】
- プロポーズの日:6月7日は「ロマンチストの会」が定めた記念日。言葉にする前に、まず動くことを後押しする日。
- 梅雨前線の大雨:台風の影響を受けた活発な梅雨前線が各地に記録的な雨をもたらし、避難勧告が相次いでいる。