蛙鳴町の西側に位置する「カエル山」。その中腹にある古い石垣の跡で、コポーは朝から必死に泥をこねていました。
4月6日。「城の日」にちなんで、彼は山道に「コポー城」を築城しようとしていたのです。
「……よし。ここを難攻不落の要塞にして、ビピクがピンチの時に『さあ、僕の城へ!』って助け出すんだ。これなら絶対にキャーキャー言われるはず……!」
妄想を膨らませるコポーの横で、弟のミニコーが、都会から届いたばかりの新聞を広げて読み上げました。
「兄ちゃん、世界ではまた橋が壊されたり、お城みたいな頑丈な施設を作ったりして大変みたいだよ。平和って、作るより守る方が難しいんだね」
ミニコーの言葉に、コポーの手が止まりました。自分が作っているのは、雨が降れば流れてしまう泥の城。けれど、ニュースに流れる「守り」の言葉は、どこか冷たくて重い響きを持っていました。
「フェっフェっ。コポーよ、城というのは石垣の高さで決まるのではないぞ」
背後から、シルクハットを被ったソンチョーが現れました。かつての無鉄砲な冒険家は、山の向こう、龍神様が祀られる湖の方向をじっと見つめています。
「この町には、目に見える高い城壁はない。だがな、龍神様と交わした『争わない』という古の約束が、何百年もこの町を守ってきた。……本当の城とは、誰かを信じるという、目に見えない心の結界のことなんじゃよ」
その時、山の頂からマスクメンが駆け下りてきました。
「ソンチョー! 町の境界線で、都会からの訪問者が迷っています。どうやら、平和な景色を求めてやってきたようですが、不安そうな顔をしています」
ソンチョーは頷くと、エンジニアのスパイスに合図を送りました。
スパイスは、つなぎのポケットから特製の「風の号外機」を取り出しました。それは、町の安全なルートと、今日咲いている花の種類を、微弱な電波とハミングで伝える、彼なりの平和維持装置です。
「……物理的な壁を作るより、情報の透明性を高める方が、今の時代には有効だ。恐怖は、無知から生まれるからな」
広場の方からは、ケロミの歌声が風に乗って聞こえてきました。それは、争いを鎮めるための聖歌ではなく、ただ「今日を一緒に生きよう」と呼びかける、ありふれた、けれど温かい歌でした。
コポーは、作りかけの泥の城を見つめました。
そして、彼はその城を壊し、平らな「休憩所」に作り変え始めました。
「……城はいらないや。迷った人が座れる場所の方が、今の僕にはカッコよく見えるから」
空では、ハッシーが都会のニュースを運んできた翼を休め、カエルたちと一緒に春の陽光を浴びていました。
(食べようと思えばいつでも食べられる。でも、食べない。それが僕なりの『平和の城』なのさ)
蛙鳴町には、城壁も兵士もいません。
けれど、互いの不器用さを認め合うその場所こそが、世界で最も壊れにくい「心の城」なのでした。
【本日のモチーフ:2026年4月6日】#
- 城の日(4/6): 物理的な守り(城)と心の守りの対比。
- 新聞をヨム日: 世界の情勢(争いや防衛)を知り、自分たちの平和を再定義するきっかけ。
- 中東情勢とインフラ破壊: ニュースの「破壊」に対し、蛙鳴町が選ぶ「交流」と「休憩所」という答え。