メインコンテンツへスキップ

蛙鳴町(あめいちょう)奇譚

2026

種ひとつ分の勇気

蝉の声が割れんばかりに響く蛙鳴町の軒先で、コポーは丸めた紙をぎゅっと握りしめていた。明日はいよいよ、龍神様の橋の欄干を磨く「渡り初め」の大役――大勢の前で口上を述べる、コポーにとって一世一代の晴れ舞台だ。

図鑑にない一行

蛙鳴町の駅前広場は、蝉の声で息苦しいほど賑わっていた。しだれ柳の影に逃げ込むように座り込んでいたのは、麦わら帽子を目深にかぶった女の子だった。膝の上のノートは、まだ一行も埋まっていない。